今回も前回に続きオニールの成長株発掘法を紹介します。
前回は四半期EPSの増加率に着目した分析でしたが、その成長力が一時的なものでは仕方がありません。成長力が持続しているかどうかを年間のEPSの増加からも見ることの重要性をオニールは説明しています。
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オニールの教え:Anual Earnings Increases
教え①年間EPSが3年連続で増加しているものを探せ
年間EPSは3年連続で増加している銘柄が望ましいでしょう。
教え②年間EPS増加率が25〜50%以上の銘柄を選べ
オニールは株を買うならその株の年間EPSが25%、50%あるいは100%以上のものを買わなければならないと述べています。
オニールの調査によると1980年から2000年の全発行済の株式の初期上昇段階における平均EPS増加率は36%であり、大化けする銘柄は、最低3年、長くて5年の間にある程度の年間EPSの増加が確認されています。
教え③株の利益はROEと一株キャッシュフローを見ろ
次に企業の成長性を評価するために利益を見ます。見方は2通りがあり、ROEが20%以上の銘柄か、一株キャッシュフローが高い銘柄をみる方法があると述べています。
ROEについて、オニールは急成長した銘柄は平均17%のROEだったことを調査により明らかにしています。大化け銘柄は最低でも25%〜50%のROEであることを突き止めました。
また、オニールは一株あたりのキャッシュフローも確認するべきとしています。オニールの調査によると、大化け銘柄の中には実際のEPSと比べ、一株あたりの年間キャッシュフローが20%以上も大きい銘柄があることがあるそうです。(後述ですがAMZNがそれにあたります)
教え④PERは重要ではない。PERの本当の使い方
オニールはPERで投資判断を行うことを徹底的に否定しています。
著書の中ではオニールの独自調査により、PERは株価の動きと関連性はなく、売買判断にはほとんど役に立たないことが判明したとあります。
また、PERが低いから過小評価されているというのは何も根拠がないと述べており、以下のようにPERに頼った投資判断を一刀両断しています。
「PERに頼った分析は基本的なトレンドを見落とす可能性があり、仮に22倍だったPERが15倍に下がったからと言ってそれを過小評価されていてお得な銘柄だと飛びつく投資家は愚かだし考えが甘い」
オニール流PERの使い方
オニールはPERを唯一、その銘柄が今後6〜18ヶ月の間にどれほどの伸び幅を達成することができるかを予測する際だけに使うそうです。
上昇余地の見積もり計算式:今後の2年間の収益の見通し(EPS) × 買った時点でのPER × 1.3
この計算式の正しさがよくわかりませんが、オニールはこのように計算しているとのことなので一旦信じておきましょう。
PERが高くても割安だった事例
オニールはPERを否定しまくる理由として、以下に示すようにPERが高くても実際は割高だった例は多々あると指摘しています。
- ゼロックスは1960年のPERは100倍だった。その後、株式は3300%上昇した
- シンテックスは1963年7月のPERは45%だった。その後、株価は400%だった。
- ジェネンテックは1985年11月のPERは200倍だったが、5ヶ月後には株価は300%も飛躍した。
- アメリカ・オンラインは1994年11月にPERは100倍だったが、その後1999年12月の最高値までに1万4900%も上昇した。
- グーグルの株価は2004年9月に115ドルだったが、2006年初めには475ドルまで上昇し、その間のPERは50〜60倍台で前後した。
調べ方
実際の調べ方を整理していきましょう。モーニングスターとIBD、及びyahoo financeを使って各種指標を調べていきます。
過去10年間のEPSとROEと一株キャッシュフローの推移
http://www.morningstar.com/で過去10年間の指標を調べられます。
EPS、キャッシュフロー、ROEなどの指標が10年分調べられるので便利です。
一株あたりのキャッシュフローはフリーキャッシュフローのものだけパッと見れますが、オニールの教え的にはおそらく営業キャッシュフローのような気がしています。その場合、Operating Cash Flowから計算してください。
単年EPS増加率、3年EPS増加率、EPSレート、PER
オニール流で株式を分析するにはやはりIBDが便利です。
IBD(https://www.investors.com/)で個別銘柄ページでEPSを調べることができます。
また、IBDでは独自のEPS指標を算出しています。
上記はNVDAの数値ですが、EPS Ratingが98です。
オニール本によると企業の直近2四半期のEPSの増加率を前年同期比と比べ、過去3年間でどれほど成長したかを測定したものであり、その結果を公開されている全銘柄で比較し、1(最低)から99(最高)の指数で示すものとあります。
つまり、スコア98のNVDAは全業種の中でもかなりEPS成長率が高い銘柄であることがこれだけでわかります。
来期EPS予測値
来期系の指標はyahoo finance(https://finance.yahoo.com/)で取得できます。
個別銘柄のページでAnalystsタブで予測系の指標が手に入ります。
来期EPS予測値は最上段で確認できます。
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検証:保有銘柄の当期EPSを確認する
NVDA
オニール本に従い、私の保有銘柄の指標をチェックしていきます。
まずはNVDAです。整理結果は以下の通りとなりました。
EPSは株価が急上昇を開始した2016年から50%以上のEPS増加率を実現しており、OKです。
また、ROEについても2017年から基準となる20%を超え、AIによる躍進によりNVDA自体の収益構造が大きく変わったことを意味しています。
一株キャッシュフローについてもEPSと比べまぁまぁといったところでしょうか。
3年EPS増加率は64%で、IBDのEPS Rating は98と最高評価に近い水準となっており、成長力は一級品です。
予想株価ですが、理由は不明ですがオニールに倣ってPER 増加予想値を+100%と置き試算した結果、予想PERが96倍の時に株価は453$まで上昇する余地があることがわかります。
NVDAのPER100倍はこのまま加熱すればありえそうですね。
CGNX
次にコグネックスです。
EPS急増は2014-12月期から始まっています。
2016-12月期以外は常に50%以上のEPS増加率を実現しており、順調です。
ROEも今期は20%以上のROEで、収益性はまぁまぁです。
3年EPS増加率は2016-12月期のマイナスの影響か20%です。EPS Ratingは97とNVDAに次いで最高評価に使いため成長性は持ち直している印象です。
こちらも予想株価は、PER100倍程度に上がった場合、144$まで値上がりが予想されます。
AMZN
問題児アマゾンです。
こんな分析をやろうがやるまいが、私はアマゾンプライム会員なのでアマゾン株を買うわけですが、一応、評価していきます。
アマゾンのEPS推移は評価不能です。
まともに評価するとマチマチで成長性が皆無という評価になります。
決算は無茶苦茶ですが、一株キャッシュフローはEPSの数倍〜数十倍、確保しているという舐めプっぷりです。
おそらくアマゾンが本気で数字を作りにいったら、綺麗な決算が出せるんだろうと思いますが、今は全力で市場を圧倒することを優先しているように見えます。
なお、予想株価ですが、さすがに現在のPERがこのまま倍になるようなことはないと思い、現状維持で試算しています。
しかし、予想PERが8と倍になっているため、株価も現在のPERを維持する前提であれば2,360$まで上昇する余地があると考えます。
AMBA
最後に値下がりして安いから買ったAMBAです。
ご覧の通り、あまり成長性は現時点で確認できません。大きく成長するタイミングは今後訪れるのでしょう。
3年EPS増加率が11%でEPS Ratingも51と芳しくありません。
急落後のリバウンド拾ったおかげで20%前後の利が乗った状態ですので、このタイミングで利確し、NVDA、CGNXあたりに資産を移しています。
したがって、成長株として現時点から購入するのはオススメしません。
まとめ
今回はオニールの成長株発掘法「CAN-SLIM」のA:年間のEPSについて紹介しました。
綺麗なチャートを描いているNVDAやCGNXは、この観点でも完璧な成長性を示すことが確認できました。一方で、綺麗なチャートを描くAMZNはアウトロー感満載な経営成績であり、オニールの手法ではうまく説明できないことも示されました。
グロース株で力強く成長する株を見つけるのであれば、今回と前回消化したオニールのCとAの手法はスクリーニングとして有効と考えます。